税務調査の頻度と選ばれる理由・調査事例

平成26年の統計では、税務調査は法人の場合で3.2%、個人は1.1%しか調査が実施されていません。
法人個人合わせても4.3%です。

つまり、95.7%は調査されていないのです。
想像より少ないですよね。

税務行政の現状と課題(平成28年3月22日、P10に調査率が出ています)

調査頻度は、悪質な場合を含む大きな指摘を受ければ、その後は、最短で3年間隔。
ほとんど指摘を受けなかった場合は、その後、5年から10年来ないことも多いです。
ですので、初めて受ける税務調査で、大きな指摘を受けないことが大切かもしれません。

弊社では、ここ数年、法人、個人合わせて、毎年10社前後の税務調査の立会をしています。
では、どのような会社や個人が税務調査の対象になりやすいのでしょうか?

弊社で決算を組んだお客様については、おおよそ想像がつきます。
いくつか理由はありますが、おおまかな傾向は下記の通りです。
 

  1. 大幅な黒字(赤字)になり、納税額が急増(急減)した。

  2. 売上、仕入、外注が急に伸びた、減った。

  3. 在庫が急に増えた、減った。

  4. 土地建物の売却があり、売却損益が多額に計上されている。

  5. 同業他社に比較して、多額の経費がある。(交際費など)

  6. 毎年消費税が還付になる会社。

  7. 個人事業から法人へ組織変更した場合。

  8. 相続、贈与、譲渡など、個人資産に大きな動きがあった場合。

  9. 税務署内で、ノルマ件数をこなすための、数あわせ調査。

  10. 規模が大きく、定期的に税務調査が入る会社

  11. 過去の調査で、多額の修正や重加算税を課され、それ以来、定期的に実施。

  12. 今まで調査されたことがなく、初めての調査。

  13. 取引先に税務調査が入り、その反面調査。

  14. 無申告の場合で、まとめて申告書を提出した場合。

 
特に、一番調査になりやすい理由は、上記1~9です。
税務署は、毎年提出された決算書・申告書を、税務署のデータベース(KSK)に登録しています。

データーベース上では時系列で比較。
毎年、それほど変化がないのに、突然、金額や割合が大きく変動すると、調査対象フラグが立つようなイメージです。

おそらく5年程度の推移を見ながら、異常値があるような場合に、調査の対象になりやすいと思われます。

実感として、いくつか実例を挙げてみたいと思います。
 

    1. 不動産賃貸業 Y㈱
       
      事業用の賃貸ビル事業で、毎年安定した収益を上げています。
      創業40年以上の社歴の長い会社です。
      数年に一度、更新料収入があり、事業用ビルのため、更新料も数百万と高額です。今まで約3年に1度計上していたのですが、その年は更新料の計上をしていない決算書・申告書を提出したところ、税務調査。

      会社も忘れていたのですが、今まで3年に1度入金されていた更新料が、借り主の資金繰りの都合で、更新料の支払いの代わりに、敷金との相殺する形に契約内容が変更されていました。

      もちろん、敷金と減らす処理と共に、更新料の計上をすべきだったのですが、いかんせん、お金の動きがなく、経理処理を失念したケースでした。
      決算のみの関与でしたので、弊社の責任にはなりませんでしたが、会計事務所側で気付くべきだったかもしれません。

      で、税務調査でこの点を指摘され、当然ですが、修正。
      税務署って、ちゃんと見てるんだなと、妙に感心した税務調査でした。

       

    1. ネット小売業 ㈱A
       
      ヤフオクなどで商品を売っています。
      個人として出品、売買を開始し、軌道に乗ってきたので、会社にして本業として営業開始。
      設立時からの関与です。法人化して3回目の決算書の提出が終わった後に、税務調査が行われました。
      1期目から3期目まで、急激に売上が伸びており、そこが調査対象の重要ポイントだったようです。

      調査の内容はオーソドックスで、売上、経費の計上時期や個人事業から会社に移行した際の切り分けの処理がきちんと行われているかという点でした。
      若干の修正はあったものの、ほとんど、無視できるレベルのものでした。

 

    1. コンサル会社 R㈱
       
      数名の小さい会社ですが、売上が4期目にして急激にアップ。
      4期目の決算書・申告書を提出した後に、調査の連絡を受けました。今回は、急激な売上アップが調査理由だと思われます。
      調査自体が初めてですので、これも理由かと思われます。

 

    1. 訪問介護事業 ㈱S
       
      8期目にて初めての税務調査。
      設立時からの関与で、すべて黒字決算。懸念すべきところも全くなく、調査でも何も指摘されずに終了。
      終わってみれば、調査が初めての会社だったので、とりあえず、見に来たという印象でした。
      指摘されるような箇所がほとんどなく、当分は調査に来ないと思われます。

 

    1. 建設業 ㈱J
       
      赤字決算が続いており、売上の変動もそれほどなく、なぜ、調査がきたのかよく分かりませんでした。
      で、実際に調査を受けてみて、理由が分かりました。調査官は理由は言ってくれませんが、複数ある取引先のうち、税務調査が入ったところがあり、そこの経理処理に問題があったのか、その裏取りのために、お客様の会社に来ているようでした。
      つまり、反面調査です。

      調査官は通常、売上、仕入、経費の順に帳簿を見ていきます。
      一応、サラッとは見るものの、特定の取引先の部分ばかり調べて、資料のコピーもその取引先ものばかり。
      あまりに、わかりやすい反面調査だったので、調査官に反面調査ですか?と聞いてみたものの、教えてくれません。

      結果、調査を受けたお客様には、納税額が出ない小さな指摘だけして、調査終了。
      正直、お客様に取っては、時間だけ取られ、迷惑な調査でした。

 

    1. 音楽製作、プロデュース会社 ㈱T
       
      毎年利益が出る、優良会社。
      定期的に税務調査は来るものの、前回は5年前。調査対象期に、自社ビルの売却、自社株の買取など、大きな動きがありました。
      税務リスクが大きな処理が多かったので、会計事務所としては、万全の体制で対応。

      で、実際に来た調査官は、新人2名。
      通常はベテランと新人の組み合わせが多いのですが、今回は新人2名と珍しい組み合わせ。

      面倒な税務処理をしているので、説明が大変だなと覚悟していたのですが、ビル売却、自社株買取には全く触れずに終了。
      せっかく、万全の準備をしていたので、少しは聞いて欲しかったのですが、そこの指摘はゼロ。

      若干、経費の計上で修正があった程度で、ほとんど修正なしで終了しました。

 

    1. 輸出業 S㈱
       
      日本で商品を仕入、海外へ輸出します。
      消費税が還付になる典型的な事業です。
      税務署からすると、不正還付もあるので、還付処理には慎重です。そこで、定期的に税務調査が行われます。
      決算のみのお客様だったのですが、調査を受けて、指摘事項なし。
      全くの修正なしは、本当に気持ちがいいものです。

      お客様の普段の経理処理が正確なのが、何よりも大事ですね。

 

    1. 相続税調査 M様
       
      数年前に弊社で相続税申告しました。
      相続税の調査は、相続後2年以上経って行われることが多いですが、今回も2年後位に行われました。申告した内容に問題はなかったのですが、家族も誰も知らない預金が遠方にあった模様で、税務署が見つけてくれました。
      これは、申告漏れになっているので、修正申告して、追加納税。

      ただ、追加で納税を払っても、手元には大分残ったので、相続人とってはいい知らせ。
      税務調査で、感謝されるのは、こういう場面だけかもしれません。

 

  1. 輸入販売、卸業 ㈱J
     
    赤字決算続き、大きな変動もなく、指摘されても、納税が発生しそうにもない会社。
    調査対象にならなそうな会社ですが、調査の時期で納得しました。通常、税務調査は、8月から12月までに集中します。
    7月に人事異動があり、その後、会社の選定、実地調査、修正申告までを年内までに終わらせることが多いのが一般的です。

    今回の調査は4月。
    完全に調査時期のピークは過ぎており、7月の異動前の時期です。
    この時期の調査は、件数こなしの意味合いを強く感じます。

    実際、この時期の調査で、厳しい指摘を受けた記憶がほとんどありません。
    今回も、納税額が発生しない程度の指摘、修正で調査が終了しました。